IL__今回フランチェスカ・ブロムフィールドとの2人展「emotinal frequencis」で展示される作品はまた違ったシリーズになるんですよね。
MK__フランチェスカさんの作品を去年imlaborでみて衝撃を受けたんですよ。超やばすぎて震えました。だからこの2人展の話をいただいた時はとっても嬉しくて…。フランチェスカさんの作品は紙の繋げ方が不思議で壁に掛かっているとそれがより強調して見えるんですが、私の近作も2枚の違うサイズのキャンバスで組み合わせでできているので、あるようで無いような、でもありそうな共通性や違いが面白く見えたらいいなと思ってこのシリーズの作品にしました。
これらは2枚のキャンバスの表面に絵の具を置いて、衝突させながら描き進めていくシリーズです。使用したキャンバスの規格サイズがそのままタイトルとして使われています。
IL__キャンバスを衝突させる回数はどうやって決めてるんですか?
MK__正直いつ終わるかずっと考えていて、衝突シリーズの時は2つの絵の表面に絵の具を置いて表面と表面を合わせるようにして描いています。最近の衝突シリーズは表面を合わせるキャンバスの軸を回転させながら描いています。キャンバスを貼ったときのタックス(ビス)の縦と横が交わる位置に絵の具を置いて、置けなくなったら終わりというか。軸を回転しながら表面を合わせているので、2つのキャンバスに置かれた点が思いもよらないところに付けられたりするのが面白いです。
IL__ちなみに、完成した作品に失敗成功とかってあるんですか?
MK__ありますよ。完成して初めて、こうゆう感じなんだなと。だから割と並行して何枚か描き進めて、完成したものを、これは出せるかどうか判断して。途中段階でもうこれはやだなってこともありますね。
でも本音を言うと、成功失敗の基準を設けたくないとは思ってるんですよ。森田真生さんが著書「計算する生命」の中で「計算」はあらかじめ決められた規則にしたがって操作することと、頭の中で曖昧に混ざり合ってしまう数量を正確に書けないからこそ、頭の外に粘土を並べて確かめることであり、この両者は背中合わせの関係にあるけどいつもピタりと重なり合っているのではなくしばしばズレが生じている。というようなことを言っていて私と作品の関係ににているなと思った事があります。
設定した事の成り行きのわからなさを楽しむこと、とりあえずはやってみるのは重要かなとは思います。でも、途中で、これは違うからやりたくないなっ、ていうのが出てきてしまう。シンプルに順番間違えたとかもあるし、絵の具のつき方がよくないとか。あと、実際に描き始めて配色がなんか思ってたのと違うというか、色の面積のバランスとか。特に手順にミスはなくてもなんか気に入らないなっていうものは、とりあえず寝かします。それでもダメなら全部潰して新しい絵の下地にしちゃいます。
IL__片山さんの作品は図像の向きは最初から決まっているんですか?
MK__縦(ポートレイト)か横(ランドスケープ)かは最初からあるんですよ、でも天地は完成してから一週間くらい眺めて決めるかな。一応サインはその向きで入れてますけど、でも実はそんなに関係なくて。(笑)
前回のXYZの個展では会場で掛け直してたりしました。やっぱりこれ逆の方がいいかも、って。あと、アトリエで人に聞くこともあります。千葉さんとかにも、これ上下どっちだと思う?私はこっちだと思うけどどうだろ。みたいな。それでこれ横っ面だと思うなとか言われると、そ、そうかな。みたいな。それで、その向きで二、三日眺めてみたりして。
IL__初めて片山さんの作品を知ったのが「Prime spiral」というグリッドに描かれた点が線で繋いである小さな油絵なんですけど。個人的にも好きな作品です。もしよければこの作品についてもお話を聞かせてもらっていいですか?
MK__この作品は2018年か19年の、Paris Internationalに出した作品なんですが。素数(ウラムノ)螺旋を引用してて。ある起点から素数の数字を辿っていくと螺旋状の図形になっていくというものです。その図形がすごく綺麗で。
あと単純に素数が好きです。全体は見えないけれど、何かヒントがあって、辿っていくと解けそうだけど、解けないみたいな。永遠なのか、無限なのかわからない数字。
次の作品ではどんな数式やグリッドを使おうって考えすぎると、目に入るもの全てを変換したくなってく病気にかかっちゃうんですよね。(笑)素数とか、暗号とか、あと二進法とか(今世界は十進法で進んでるのに…)でも、なんかこうやって引用することで強い気持ちで絵画に向き合えるんです。
IL__強い気持ちで向き合える…
このように即物的というか、既存のルールやフォーマットを引用した制作方法になったきっかけとかはあったんですか?
MK__なんだろう。一つのきっかけとしては終わりが見えない苦しさ、言い方は変だけど、そこでなんか自分が絵画に負けてしまうというか。自分はうまく絵を描けるタイプではないから。そもそも、私は何を描きたいか何が完成か決めきれなかったんですよね。
学生の頃はその決めきらない時間の余裕が確保されていて、永遠に同じキャンバスと向き合い続けることができますよね。でも、社会に出ると、いつ完成が来るかわからない作品と向き合うのは大変です。そのうち、完成までに3年とかかかってしまう絵とかが出てきて。それで明確に終わりを決めてみたいと思ったんです。
IL__当時はどんな絵を描かれてたんですか?
MK__当時は自分でドローイングした絵を型紙みたいなものにして、画面の中に当てはめて描いては壊してみたいな行為を繰り返してました。