INTERVIEW__001March 14, 2020
Interview with:
フェリックス・トレッドウェル
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- im labor
1992年生まれのイギリス人アーティスト、フェリックス・トレッドウェルは新世代のブリティッシュアートを牽引する若手作家の一人である。英国キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツで学位を取得後、同国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにて絵画科を修了した。
本インタビューでは私たちのプロジェクトスペース2×2×2で発表する新作についてと、トレッドウェルの作家としての今後の展望について聞いてみた。
IM LABOR__まず始めに、今回は私たちのスペースで展示をしてくれてありがとう。
フェリックス・トレッドウェル__こちらこそ。日本で作品を展示することができてとても嬉しいよ。
IL__今回2×2×2で展示する新作について質問しても大丈夫?
FT__もちろん。
IL__今回展示してくれる少年が走っている青い絵を初めて見た時、一番印象に残ったのが、少年が外の世界に興味を持ち始めているように見えたことなんだけど。
FT__確かに。
IL__例えば ‘Blue Puff’(1)、’Dark Age’(2)等、これまでの作品を見てみると、描かれているキャラクターは物事に興味が無いような印象があったし、視線もこちらを向いていなかったよね。
FT__そうなんだよね。これまでの作品で描いてきたキャラクター達は臆病だったし、不安そうに見える。でも今は楽観的で前向きな感情を僕の絵を通してこのどうしようもなく悲しい世界に伝えたいと思っているんだ。
IL__確かに、‘Attack on titan’(3)や女の子が犬を抱えているドローイングとか、最近の作品のキャラクターはこちらを横目で伺っているような表情をしているけど、それは意図的なものなの?
FT__自分が描くキャラクターが鑑賞者により多く関与する必要があるのではないかと感じるようになったんだと思う。キャラクターの視線をこちらに向けることによって、鑑賞者との関係性に大きな変化を生むことが出来る。盗撮みたいに一方的じゃなくなるんだ。
IL__なるほど。何を描くかあらかじめ決めてからペインティングを描き始める?
FT__スケッチを描くよ。それから面白い構図を探す。漫画とかで使われてるコマ割りを使ってドローイングを配置したりするよ。
IL__メディウムはどう?油絵からエアブラシまで色々な種類の画材を使っているよね。
FT__普通の筆とエアブラシを組み合わせるのがとても楽しくて、最近はそのテクニックを使って絵を描いているよ。エアブラシはキャラクターを柔らかくしてくれるし、繊細な質感(表情)を表情に出すことが出来るんだ。色々なメディウムを使うけど、特にクレヨンでスケッチするのが好きだね。小さい時から絵を描くことは自分の考えていることを表現するのに一番直接的で楽しい方法なんだ。
IL__小さい頃から絵を描くのが好きだったの?
FT__うん。いつもフィギュラティブなドローイングを描いてた。ラグラッツ*とゴジラの絵を描いたりしてたよ。
IL__自分でオリジナルのモンスターを作ったりもしてた?
FT__してた。でも今はモンスターよりも人間とか動物だね。もっと自分たちが存在する世界と近いものを造ろうとしてるんだ。
IL__それは日常生活から影響を受けてたりもするの?
FT__そうだと思う。僕は自分の幼少期の思い出に固執していて、それを取り戻そうとしているんだ。
IL__興味深いね。具体的な思い出とかがあったら聞いてもいいかな?
FT__特に具体的なものはないんだけど、10代の時の考え方とか冒険心とかかな。全ての事に対してオープンでどんなことでも挑戦したい子だったんだ。
IL__恐れを知らずだったんだね。
FT__そう。でも今は10年前に比べると色々な事に恐怖を感じるようになってしまったね。
IL__絵を自分の仕事にしたいって最初に気づいたのはいつ?
FT__学部にいた頃だったから、多分5年くらい前。絵を描くことが唯一楽しいと思えることだったんだ。心の問題を治療するような感じ。
IL__描いてる時だけ心が休まるような感覚?
FT__そう。ストレスを感じることもあるけど、気持ちを落ち着かせてくれる時の方が多いかな。他のペインター同様、何とか頑張っているよ。
IL__アトリエには毎日決まった時間に行くの?
FT__だいたい朝10時半くらい。夜制作するのが好きじゃないんだ。
IL__じゃあ、暗くなる前にアトリエを出るんだ。
FT__うん。外が暗くなってくるのと比例して描いている絵がどんどん悪くなってくるんだ。そうすると、疲れてきて耐えられなくなるんだよね。僕は自分のことを世界一せっかちな人だと思うよ。
IL__アトリエで制作する以外は何をして過ごしてるの?
FT__ゲームかな、主にPCとカードゲーム。現実世界から逃避出来るもの。MMOG(大規模マルチプレイヤーオンラインゲーム)が好きなんだ。
IL__最近プレイしてるのは?
FT__ワールド・オブ・ウォークラフト、マジック:ザ・ギャザリング、あとはDOOMかな。日本でも人気があるのかわからないけど。
IL__日本でも人気だよ。
FT__興味深いね。日本ではモンスター・ハンターが有名だよね。
IL__うん、面白いよ。プレイしてる?
FT__したことないんだ。一緒にやる?
IL__次回日本に遊びにきた時にでも是非。そういえば、京都精華大学に一年間交換留学生として日本に住んでいたんだよね。
FT__うん。
IL__その経験が自分の作品に影響したりしている?
FT__していると思う。どうやって説明したらいいかわからないけど、文化的側面で人としてたくさんのことを学んだ気がする。日本人とイギリス人は似ているところがあるよね。
IL__例えば?
FT__主にユーモアのセンスかな。どっちも独特だよね。あとは、イギリスも日本も社会的階級にすごく固執している印象がある。それと、車道が左側なとことか。
IL__そうだね。あとは断り方とかね。
FT__確かに。
IL__美術に関してはどう?今の日本の美術はロンドンで活動するイギリス人のアーティストの目にはどう映ってる?
FT__日本だけに限った話ではないけど僕たちは今アイデンティティーの危機に直面していると思う。自分が誰であるかを定義することが難しくなっている。イギリスも日本も政治的側面で急速に変化してきているし、今僕たちの世代は混沌の時代を生きてる。若い世代として昔の人たちが始めたことを引き継がなければならないし。
日本のアートシーンは新たな日本人アーティスト達によるニューウェーブの出現を待っているんだと思う。多分、若い世代のアーティストからフレッシュなビジョンを得ることが必要なんじゃないかな。
IL__そう思う。最後にもう1つ質問してもいいかな?
FT__もちろん。
IL__ありがとう。アーティストとしての今後の計画について教えてくれる?
FT__今後は自分のペインティングの世界の深度をもっと広げていきたいなと考えている。僕は今、自分が描いたキャラクターを基にしたおもちゃを作っていて、小さい頃からの夢がついに叶ったんだ。自分の作品をより身近なものにしたいと思っている。これから僕の制作がどのように変わっていくのかはわからないけれど、もっと規模が大きくなっていってほしい。前向きに、目的を達成できることを信じているよ。
IL__おもちゃが完成したら是非見せてね。今日はわざわざインタビューの時間を作ってくれてありがとう。
FT__こちらこそありがとう。
- About the Artist__
- ロンドンを拠点に活動しているフェリックス・トレッドウェル(B.1993)は英国キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アート卒業後、同国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにて絵画科を修了した。主な個展に「Little Dark Fantasy」(Union Gallery、ロンドン、イギリス、2019)、「Community」(LTD Los Angeles、LA、アメリカ、2019)、「Dark Age」(L21 Gallery、パルマ、スペイン、2018)等がある。2014年にHix Award受賞。